旬の食材が繰り広げる素朴な贅沢のひととき。 「昔、親父が採ってきて食べさせてくれた山の幸や川の恵みが、自分の味覚の原点でしょうね」。「志むら」のご主人、森中茂男さんはそう話す。だから、自ら時間を見つけては山に分け入り、川に網を打つ。飛騨地方は、いわずとしれた山国だ。春から夏には山菜、秋にはきのこといった自然から恵みがあふれている。山間の川へ目を向ければ、アブラメ、アマゴ、赤ジャスなど清流でなければ育たない川魚が泳いでいる。「この地方は食材が豊か。そんな地元の食材をふんだんに使った懐石料理を供したいんですよ」。 梁や柱が飴色に輝く、築 150 年という古民家の一室で、落ち鮎料理の数々を口にした。もちろんご主人自らが獲った鮎。それを、自らが採取した山菜やきのこ、店裏手の畑で栽培した野菜が盛り上げる。森中さんが目指した、野趣あふれる郷土懐石がそこにあった。 |